いつも同じパターンの悩み方で苦しいならスキーマ療法が効果的
いつも同じパターンの悩み方で苦しいなら、まずはその感覚を大切にしてあげてください。長い間、同じことで悩み続けてきた人ほど、「自分が弱いからだ」「性格の問題だから仕方ない」と、知らず知らずのうちに自分を責めてしまいがちです。
でも、何度も同じ痛みを感じるのには、あなたの努力不足とは別の、ちゃんとした理由があることが多いのです。ここでは専門的な話に入る前に、心を少し休ませるような気持ちで、スキーマ療法の考え方を優しくお伝えします。
同じ悩みが何度も繰り返される理由
「人間関係がうまくいかない」「大切にされていない気がする」「頑張っているのに報われない」。こうした悩みが形を変えながら何度も現れると、心はとても疲れてしまいます。
頭では「考えすぎだ」「気にしなければいい」と分かっていても、感情がついてこないこともありますよね。
スキーマ療法では、こうした繰り返しを、過去から続く心のパターンとして捉えます。それはあなたを苦しめるためにできたものではなく、昔のあなたが必死に自分を守るために身につけた反応だった、という見方をします。
スキーマとは心に残った思い込み
スキーマという言葉は難しく聞こえますが、簡単に言えば「心の中に深く根づいた思い込みや感じ方のクセ」です。たとえば、子どもの頃に何度も否定された経験があると、「どうせ自分は大切にされない」という感覚が心に残ることがあります。
大人になってから誰かに少し冷たい態度を取られただけで、その昔の感覚が一気に蘇り、必要以上に傷ついてしまうこともあります。これは弱さではなく、過去の体験が今も心の奥で生きているだけなのです。
今のあなたが悪いわけではありません
スキーマ療法が大切にしているのは、「今のあなたを責めない」という姿勢です。同じことで悩むたびに、「またダメだった」と落ち込んでしまう人は多いですが、そのたびに心はさらに疲れてしまいます。
スキーマ療法では、「なぜそう感じてしまうのか」を丁寧に見ていきます。そこには必ず意味があり、理由があります。あなたの反応は、これまでの人生の中で自然に形づくられてきたものなのです。
感情にそっと寄り添う考え方
多くの人は、つらい感情が出てくると「こんなことを感じるべきじゃない」と抑え込もうとします。でも、スキーマ療法では、感情を無理に消そうとはしません。悲しさや不安、怒りは、あなたが何かを大切にしている証でもあります。
たとえば、人に見捨てられる不安が強い人は、それだけ人とのつながりを大事にしているのかもしれません。感情を敵にせず、「そう感じるほど、これまで頑張ってきたんだね」と認めてあげることが、癒しの第一歩になります。
具体的な日常の場面を思い浮かべてみてください
たとえば、職場で上司に少し注意されただけで、一日中落ち込んでしまう人がいます。頭では「みんな注意されるものだ」と理解していても、心は「自分は価値がない」と感じてしまう。
このときスキーマ療法では、「今の出来事」と「昔からの思い込み」を分けて考えます。注意された事実と、「自分はダメだ」という感覚は、必ずしも同じものではありません。
この違いに気づくだけでも、心の負担は少し軽くなります。
安心できる感覚を育てていく
スキーマ療法は、過去を掘り返して苦しくなるためのものではありません。むしろ、今のあなたが少しずつ安心できる感覚を育てていくための方法です。
自分の内側に、「大丈夫だよ」「もう一人で耐えなくていいよ」と声をかけてくれる存在を育てるようなイメージです。最初はうまくできなくても構いません。
大切なのは、急がず、優しく進めることです。
あなたは変わろうとしている途中です
ここまで読んでくれたあなたは、すでに自分の苦しさを理解しようとしています。それだけでも、とても大きな一歩です。
スキーマ療法は、「すぐに治す」ための魔法ではありませんが、「もう同じところで苦しみ続けなくてもいいかもしれない」と感じられる道を示してくれます。
まずは「自分の心には理由がある」「理解されていい存在なんだ」と、そっと思ってみてください。その安心感が、これからの回復の土台になります。
自分で出来るスキーマ療法のやり方
自分で出来るスキーマ療法のやり方について知りたいと思ったあなたは、きっと「この苦しさを少しでも自分で和らげたい」「同じ悩みを繰り返したくない」と感じているのではないでしょうか。
スキーマ療法は本来、専門家と一緒に行う心理療法ですが、考え方や一部の方法は、日常の中で自分自身に向けて使うことも可能です。
ここでは、理論的な背景を押さえつつ、自分で実践できる形に落とし込んで解説します。
スキーマ療法の基本的な考え方
スキーマ療法では、心の問題を「性格」や「意志の弱さ」ではなく、幼少期からの体験で形成されたスキーマという心の枠組みとして理解します。スキーマとは、世界や自分、人間関係をどう捉えるかという深いレベルの思考・感情・記憶のまとまりです。
たとえば「見捨てられる」「価値がない」「人は信用できない」といった感覚が、自動的に反応として出てくる場合、それはスキーマが刺激されている状態と考えます。
重要なのは、スキーマは過去に適応するために作られたもので、今のあなたを苦しめるために存在しているわけではない、という点です。
よく見られる代表的なスキーマ
自分で取り組むためには、まずどんなスキーマがあるのかを知ることが役立ちます。代表的なものとしては、見捨てられ不安スキーマ、欠陥・恥スキーマ、失敗スキーマ、服従スキーマ、過度な自己犠牲スキーマなどがあります。
たとえば、相手の反応が少し冷たいだけで強い不安を感じる人は、見捨てられ不安スキーマが刺激されている可能性があります。何か失敗すると「やっぱり自分はダメだ」と強く思い込む人は、欠陥スキーマや失敗スキーマが関係していることがあります。
自分の反応を記録する
自分で出来るスキーマ療法の第一歩は、日常の中で起きた出来事と自分の反応を客観的に捉えることです。おすすめなのは、簡単なメモを取ることです。「出来事」「そのときの感情」「頭に浮かんだ考え」をセットで書き出します。
たとえば「友人から返信が遅い」「不安と寂しさ」「嫌われたのかもしれない」という形です。ここでは正しいかどうかを判断せず、ありのままを書くことが重要です。
スキーマを推測する
次に、その反応の背景にどんなスキーマがあるのかを考えます。「この考えや感情は、昔から繰り返しているパターンだろうか」と自分に問いかけてみてください。
先ほどの例であれば、「相手の行動=見捨てられる」という結びつきが強い場合、見捨てられ不安スキーマが関係している可能性があります。ここで大切なのは、分析しすぎないことです。「たぶんこれかな」程度で十分です。
今と過去を切り分ける
スキーマ療法では、「今起きている現実」と「過去の体験から来る感覚」を分けて考えます。理論的には、スキーマは過去の記憶と強く結びついており、現在の状況を過去と同じものとして解釈してしまう傾向があります。
たとえば「返信が遅い=見捨てられる」という反応が出たとき、「これは過去の体験が反応している可能性がある」「今の状況には他の説明もある」と言葉にしてみます。この切り分けができると、感情の強度が少し下がることがあります。
健康な視点を育てる
スキーマ療法では、健康な大人モードという考え方を重視します。これは、感情を否定せず、現実的でバランスの取れた視点から自分を支える心の状態です。
具体的には、スキーマ的な考えが出てきたときに、「不安になるのも無理はない」「でも、必ずしも事実ではない」と自分に語りかけます。これはポジティブ思考ではなく、現実的な再評価です。
繰り返すことで、少しずつ新しい反応パターンが育っていきます。
参考元ページ→自分の思考パターンを修正するスキーマ療法の実践方法
自分で行う際の注意点
自分で出来るスキーマ療法は、あくまでセルフケアの一環です。過去のトラウマが強く反応し、感情が制御できないほど辛くなる場合は、無理に一人で進めないことが大切です。
また、完璧に理解しようとしないことも重要です。スキーマ療法は「気づき」と「繰り返し」によって効果が出てくるものです。
少しずつ、自分の心の仕組みを理解する姿勢を持つだけでも、同じ悩みに飲み込まれにくくなっていきます。
続けることで得られる変化
最初は「分かったつもり」でも、実際の感情はなかなか変わらないかもしれません。それでも、反応に名前をつけ、「これはスキーマだ」と気づけるだけで、以前とは違う距離感が生まれます。
自分で出来るスキーマ療法は、心をコントロールする技術ではなく、心を理解し、扱いやすくしていくための方法です。
繰り返し実践することで、同じ出来事に対する感じ方や行動が、少しずつ変化していく可能性があります。